溺れる唇

「痛い・・・痛いってば」

何度目かの私の抗議を無視して
角を曲がり、
近くの立体駐車場へ入る裕馬。

気づかいの無い速度は
走るのと変わらないくらいで、
私は、階段を上って行くのもやっと。

「裕馬!・・・きゃっ」

ヒールの爪先をひっかけた
私を引っ張って、
裕馬はやっと足を止めた。

運動不足から脱したとは言っても、
倍ほどの歩幅で進む大男に
ついて行くのはマラソンと一緒だ。

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