溺れる唇

閉じられないままのドアのこちら側で
押し黙っていると、
ふいに動いたドアノブが、
私の手が押し上げた。

ゆっくりと開いたドアから、
上司ではない、笠井さんの顔が現れる。

「・・・あ・・・」

見合わせた目を離せないままの私の腰に、
笠井さんの右腕が回され、しっかりと、
昨夜よりも強く抱き寄せられた。


寄り添ってくれる優しい温もり。

みっともない私を抱きとめてくれた胸に
頬を押し付けると、
穏やかなリズムが伝わってきた。


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