溺れる唇

「これはちょっと難しいかも」

ひととおりの点検を終えた、私の所見。

「手術が必要ね」
「手術?」

「バラして修理しなきゃってこと。
部品があるかどうかだけど・・・
どっちにしろ、今すぐは無理よ。
持ち帰らせてもらって後日、連絡します」

「それは困るよ!」

パチンとノートPCの蓋を閉めた私に、
裕馬が弱り果てた顔をする。

「あーもう、それをどうしても
明日の会議にかけたいんだよ~」

ぐしゃぐしゃと髪をかきむしり嘆く裕馬。


そんな姿を座ったままで眺め、

『二の腕の筋肉が昔よりも逞しくなった』

などと思う私は欲求不満なのだろうか?


「・・・仕事が終わればいいんでしょ?」



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