溺れる唇

「え?それってどういう・・・」
「保存先は?」

「保存先?」
「どこに保存したの?このPCの中?
それとも共有フォルダ?」

きょとんとした裕馬が、あ、と口を開く。


よほど慌てていたらしい。

昔から、PCとか、ITとか。
そういうのに弱くて、あまり
詳しくなかった裕馬だけど。

こうして仕事をしているからには、
そのくらいの予備知識はあるはずなのに。

人は焦ると、なぜだか、基本的なことを
見逃してしまう。


「あ・・・作ってたのは共有フォルダに」
「なら、自動保存されてると思うわ。
会社のPCは全て、20分ごとに自動保存
されるように設定してあるの」


そう、他でもない私が。



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