溺れる唇

「・・・嘘だよ」

思わず振り向いた翔子の耳元に囁くと、
もうっ!と、かわいらしい力で
胸板のあたりを押された。

「ばか」

ぷいっとあっちの方を向いて
歩き出した翔子に
俺はたったの2歩で追いついて、
あはは、と笑って手を繋いだ。

「ごめんごめん」
「本当にいたのかと思ったじゃない」
「いたら、困る?」

俺の手の中から引き抜こうとする手を
ギュッと握って見つめると、
翔子は困ったような笑顔を見せた。

「裕馬だって、会社の人とかに
見られたら困るでしょ?」
「困らないよ」
「社内で噂になるわ」
「俺と翔子が手繋いで歩いてたって?」

繋いだ手と手を上げて見せると、
翔子の白い頬に赤みがさした。

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