溺れる唇

「そうみたいですね」
「ソフトじゃなく、ハードの問題だった
みたいだな。危うくデータがとんじゃう
とこだったって書いてある」

デスク上の笠井メモに目を通して言う
藤原さんは、私より3年早く入社した
先輩で主任。

一応、上司ということになるのだが、
ここでは役職名や敬称は省かれている。

そんな藤原さんが明るく笑っているのは、
昨日のサーバに怒ったトラブルのこと。

彼は笑っているが、飛んでしまった
かもしれない膨大な経理データのことを
考えると私の顔はひきつってしまう。


正直言って・・・・・笑えない。


そんな大変なことを笑って話す
藤原さんも藤原さんだが、
笠井さんものんびりしているというか、
なんというか・・・


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