溺れる唇

私の怒りが伝わらなかったのか、裕馬は
私以上の大きな笑顔で挨拶を返して来た。

「お疲れ!昨日は本当にありがとう!
おかげで助かったよ」


このやろう・・・

私が積み上げて来た、この静かな
オフィスライフを崩しやがって・・・


「いえ、仕事ですから」

微笑みを崩さず言う私に、藤原さんが
控えめに声をかける。

「お、おい、沢田・・・」

「おかげで会議もうまくいったし!」
「そうですか。良かったですね」

私の返事は、もう大根役者もびっくりの
棒読みだ。

「だから、昼メシおごるよ」



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