なえる
 ガーデニングの家に新しい花が増え、自転車のカゴに入っていたサッカーボールは、野球のグローブに変わっていた。

 自分はこれから変われるのだろうか。

 いつかは、マイホームなんかを建ててみたいと考えた。そんなことが自分に叶うのだろうか。そう考えて、答えはすぐに出た。

 とりあえず、不倫はしないことだ。

 みよしの頬に涙が流れた。これでよかったんだ。



 駅が見えてきた。もうここに来ることはないだろう。そして、三田村が家に来ることも。

 電車を待つホームで子供と目が合い、みよしが笑いかけると、子供も笑顔をみせた。

 その笑顔に、みよしは心も体も浄化されていくような気がした。

 三田村がみよしにかけてきた言葉はほとんどが嘘だったのかもしれないが、ひとつ本当のことがあった。

「子供は宝物だ」

 そんな宝物を騙してまで、不倫をするような男にはもう出会いたくない。

 電車がホームに入ってきた。

 電車に乗り込むと、さっきの子供がみよしを見て笑っている。
 
「ごめんね」

 みよしは仕事を辞めることを決意した。

 電車の出発のベルが鳴り響いている。




 END
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