幸せ家族計画
『今、お時間ありますか? ちょっとだけ相談に乗って欲しいんですけど』
「え? いいけど。電話で? それとも顔見ての方がいいのかしら。だったら子供がいるから、外出は無理なんだけど」
『実は、お宅の前まで来てるんです』
消え入りそうな声で、彼女はそう言う。
慌てて玄関の扉を開けると、困ったようにうつむいたまま、左手に受話器を、右手にハガキを持った綾乃ちゃんが立っていた。
達雄に送った結婚と転居のお知らせのハガキだ。
なるほど。
これを見てここまで来たのね?
「すみません」
「いいのよ。入って。ちょっと驚いたわ」
彼女が玄関に入ってくるまでの間に、紗優が顔を出した。
キョトンとする紗優に、彼女は笑顔を作り「こんばんは」と挨拶する。
「こんばんは。お姉さん、どこかで会ったことない?」
「え? ああ。覚えてるのかな。すごいね。えっと……サユちゃん?」
「うん。お姉さん、こっち」
名前を呼ばれて、紗優は嬉しそうに綾乃ちゃんの腕を引っ張っていく。
紗優と綾乃ちゃんが会ったことなんてあったかな。
だけど、二人は特別違和感もなく仲良く話をしている。
名前も、達雄からでも聞いたのかしら。
まあいいや。
お茶をいれる間、紗優にお相手をしていてもらおう。