幸せ家族計画
「後悔されたら嫌だからな」
「そうね……」
彼女の瞳が考えるように上を向く。
腕を背中に回しながら、その表情の変化をずっと見ていた。
女だてらにきちんと仕事をしてきた紗彩。
管理職を降りるのだって、本当は辛い決断だったはずだ。
ここでまた妊娠したら、またその役職に戻る日は遠のく。
もしかしたら戻れる可能性さえ、失くしてしまうかもしれない。
しかし、彼女の表情には不安を表わすようなものはなかった。
少しだけ意地の悪そうな笑顔を浮かべて、俺を上目づかいで見る。
「いいわよ。
実際管理職を降りてからの方が、仕事自体は楽しいの。雑務に煩わされることが減ったから。
それでも昔は、認められたかったから意地になってたけど」
「意地って?」
「シングルマザーだとね、世間の目が色々厳しいの。離婚な訳じゃなくてもね。
だから社会に認められたいと思ってた。
でも今は、あなたが認めてくれるから大丈夫」