幸せ家族計画

病室に入ると、医師が少し苦い顔をして俺の顔を見た。


「……赤ちゃんの心拍数が落ち始めています。本人にも確認しましたが、帝王切開に切り替えましょう」

「え?」


帝王切開。
ってことは、手術をするってことか?


「簡単にご説明します。同意書も書いていただかなくてはならないので」


看護師さんが持ってきた資料と同意書。
それを目で追って見るものの、内容が頭に入ってこない。
医師からの説明も同様に頭に入らない。

この俺が?
動転してるっていうのか?


「このままお産が進むのを待つには、体力的にもきついと思います。
同意いただけましたら、こちらにサインをお願いします」


自分の名前なんて、腐るほど書いてる。
なのに手が震えるってどういうことだ。

手術の同意書。
こんなに薄っぺらいたった一枚の紙なのに。

これに書く名前の重さは一味違う。
ともすれば婚姻届より緊張してる。


「お父さん」


不安げなサユが、俺の左腕に頬を寄せる。
その肩を掴んで引き寄せる。

それは多分俺自身が安心したかったからだ。
< 351 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop