幸せ家族計画
「そんな事は言えないけど」
言えないのかよ。
ホントダメだな、コイツ。
ほぼずっと一緒に暮らしてきて、今更何を恥ずかしがってんだか。
「でも、綾乃に会いに帰る」
財布をとりだそうと、胸ポケットに手をいれようとするのでそれを制した。
「ウーロン茶くらいおごってやる。早く行けよ」
「呼びだしといて悪い。またな」
言うが早いか駆け出して、あっという間に入口まで行く。
入ってきたお客とぶつかって、深々と頭を下げながらも尚も急いで出ていく。
相変わらず、冴えない男。
だけど、それがお前のいいところだって、
アイツは自分でわかってんのかな。
きっとオーナーは苦虫でも噛みつぶしてんだろうな。
演奏途中で出て行かれるのは、誰だって嫌なもんだ。