幸せ家族計画

 夕食はホテル一階にあるレストランに行った。

肉厚の牛ステーキにとろみのある絶品ソース。
赤ワインを傾けると、穏やかにこちらを眺めている彼と目が合う。

右手には、同じ色の液体が入ったグラス。
でも中身はグレープジュースなのだけど。


「うまいか?」

「うん」

「酒の飲み過ぎには気をつけろよ?」

「平気。私強いもん」

「紗彩も強かったけどのぼせたらしいぞ」


ポロリと、彼の口から出た言葉に、私の笑顔が固まった。
キョトンとした彼の表情が、段々驚きに変わるのが見える。

その瞳に映る私の表情は、明らかに険しくなっていた。


「なんでここで紗彩さんが出てくるの」


よりによって、元カノの名前を出すことなんかないじゃない。

彼は、しまったとばかりに口元を押さえる。
その動作に、ますます腹が立ってくる。

< 84 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop