魔天戦史


「……邪魔するぞ、仙石……」


「お、どうしたんだい、こんな場所に?」


仮面の男は薄暗い一室にやって来た。男を出迎えたのは、羽織りを着た中年の男だった。


「アレの様子を見に来た。開けてくれ」



「……そうか…分かった。ちょっと待っててくれ」


仙石と呼ばれた男は薄暗い部屋の向こうへと歩いていった。仮面の男も、薄暗い中を確かな足取りで進んで行く。

少し進むと、少し小さめの棺桶が仮面の男の前に現われた。



仮面の男が足を止めるのと同時に、棺桶の蓋が横にスライドした。


蓋が完全に開き切る時に仙石も仮面の男の横に立った。




「…………まだ、封印は無事の様だな……」

「そりゃあ、これが暴れ出したら、とても僕達だけじゃ手に負えないからねぇ……」


「流石の仙石元帥も、これは苦手か?」



「元、だよ……今はもう抜けた身じゃないか。僕も、君も……アイザックに、神崎……思えば、随分沢山抜けたねぇ………」


「……それだけ、事態を重く見ているということだ……他にも、大勢が我々に賛同している………後は、事態に気付かない統合軍の奴等を処理するだけだ」



「……悲しいねぇ…かつての戦友達と刃を交えることになるとは……昔は、一緒に士官学校で学んだのにねぇ………」



「……昔の話だ………これの封印は頼んだぞ、仙石」



「分かってるよ。こんなもの、世の中に晒す訳にはいかないからねぇ……」




二人が見つめる棺桶の中には……




「……こんな少女が、世界を崩壊させるなんてねぇ……」





鎖で巻かれた、幼い少女が眠っている。




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