魔天戦史
「来れ、ゼウス!十二神を束ねし偉大なる神々の父よ!」

憲蔵が叫ぶと空から数本の稲妻が束になって憲蔵に落ちた。煙が晴れるとそこには稲妻を纏った神々しい霊気を放つ憲蔵が立っていた。その姿を見て、朱翅と菊翅は畏怖した。

「…大神ゼウス…オリンポス十二神を束ねる神々の父…現存する聖霊の中では最高の雷の使い手…!」

憲蔵は微動だにしない。しかしそれが二人の神経を逆撫でした。

「くっ、調子に乗るなッ!」

朱翅が刀を抜こうと構えた瞬間、憲蔵の姿が消えた。

「っ…!?何処に…!?」
「こちらだ。」

「!?」

その声に振り返った時には、すでに菊翅は憲蔵の技を食らっていた。

「ぐぁ…ッ!?」

菊翅は地面に倒れた。
「くっ、何が…!?」

「忘れたか?雷属性は全属性中最も機動力が高い事を…」

朱翅は声を辿るのが精一杯で、憲蔵を捉えることすら出来ない。

「そう…それにゼウスは更に上位の紫電属性を操る聖霊…ゼウスはその機動力と雷の破壊力を完全に引き出すことができる数少ない聖霊…」

崇史が呟いている間に朱翅は憲蔵の一撃を食らって倒れた。

「しかし、拘束解除すらしていない俺に一太刀も浴びせられないとはな…すっかり腕が鈍ってしまったようだな…」

憲蔵は何処からか現われて結界を解いた。しかし二人はまだ体が痺れている。

「くっ…全く、情けないな…私も朱翅も、すっかり腕が鈍っていたようだ。これでは、神崎に一太刀も浴びせられないはずだ…」

「この学園に来たのか…!?」

それに答えたのは崇史だった。

「はい。その時は、京介君も一緒でしたよ。神崎は何もせずに帰りましたが…」

「…そうか…やはりこの場所は敵方に把握されているようだな…まぁ、このことは国連の大帥会で議論した方がいいな。お前も、覚悟した方がいいぞ。」

「…覚悟…ですか?」

「あぁ。これは推測に過ぎんが、敵の拠点は、秘城都市ドライツェンにある可能性が高いからな。」

「ドライツェン…!?あの、アルプス山脈の奥深くにある秘密都市ですか!?」
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