魔天戦史
グレンの質問に答えたのは憲蔵だった。

「詳細は後で伝達させるが、大まかには、護衛艦十二隻に空母四隻。駆逐艦六隻に空母の艦載機が百二十機。戦死者は二百人を超える。今のところはこれだけだ。」

「そうか…やはり追悼式は行いたいね。」

「そうですね…いずれは、日本に赴くことになるでしょう。」

「しかし、今は敵を殲滅することの方が大事だからね。」

「…しかし…」

そう呟いたのは左目に眼帯を付けた女性だった。

「いつの時代も、遺族というものは戦争の詳細など気にもとめない。ただ家族が死んだことのみが重要…もしや、敵はそれが目的では…」

「…どうかしたかい、ユニス?」

「…敵は、直接的打撃ではなく、市民による世界各地での暴動が目的なのでは…」

「ふむ…確かに外からよりは中からの方が効率的だからね。」

「暴動か…それは厄介だな…」

「ということは敵はこれからも都市部での市街戦に持ち込む機会が多くなるな。」

「あるいは、今回のように国軍を巻き込んだ攻防戦…」

「…こうなっては、こちらで被害を減らすしかないね。各国に国連統合軍の駐留軍がいたはずだ。駐留軍に援軍を派遣しよう。ひとまずはそれで様子を見よう。」

「そうですね。日本には須山がいる。援軍は第一師団の分隊のいくつかを派遣しましょう。」

「あぁ。助かるよ。いずれ、国連も変わらなくてはならない日が来ると思うけど、その時まで、私達が世界を守らなければならない。君達には期待しているよ。」

その言葉に全員が黙って頷いた。

「じゃあ、勇翔君は憲蔵の下に所属してくれるかな?」

「了解しました。行くぞ、勇翔。」

「あ、はい。」

二人はそこで会議室を出て行った。大元帥はその背中を見つめていた。
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