魔天戦史
「…まさか、御自らいらっしゃるとは…まぁ、おかけ下さい。」

「済まないな、パラケルスス殿。」

アルカディアは床に腰を降ろした。他にはボルトとシルフィードと憲蔵と勇翔の四人だけだ。他の精霊王は姿を消している。

「…それで、この老骨に一体何用でこちらに?」

「…精霊界の基盤となるべき『宝珠』が、次々と何者かに強奪されている…」

「…!?」

「…貴方なら、その意味がお分かりだろう…」

「…憲蔵と勇翔は席を外してくれ…」

「…分かりました。」

憲蔵は勇翔を連れて小屋の外に出た。

「…一体、何故その様な事が…精霊界の宝珠を強奪するなど…」

「…恐らく、今国連が相対している勢力の者だろう。いずれにしても宝珠を強奪出来るとなると、相当の手練れ…私は、仮面の男ではないかと思っているのだが…」

「…その根拠は?」

「…今し方、仮面の男と切り合って来たところだ。」

「…会ったのですか?」
「あぁ。危うく斬られるところだった。」

「…宝剣を抜いたのですか…?」

「…そうしなければ、あるいは本当に斬られていたかも知れない…宝剣の制作者のお一人としては、複雑だろうが…」

それを聞いてパラケルススはうつむいた。

「…十賢、ですか…あの頃は、志を共にした仲間達とあらゆる世界を周りました…そしてあらゆる物を創ったものです。」

「…懐かしいか?あの頃の貴方達の瞳は、まるで少年のように輝いていた…私は、それが羨ましかった…」

「………」

「…そんな貴方達が、何故今のように世界各地でバラバラに隠遁しているのか…一体、何があったのだ…?」

しかしパラケルススはうつむいたまましゃべらない。

「…やはり、『彼』か…」

「…あいつの名は、もう聞きとう無い…」

「…彼は今、国連に敵する勢力の指導者達の一人となっている…」
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