一緒に暮らそう
「ふーん。友達はあんたが彼氏に遊ばれてるんじゃないかって心配してるんや。そんなん気にせんでええと思うけどなぁ。その子はあんたらカップルの様子を間近で見たわけちゃうやろ」
「ええ、まあね。ねえ、中山さん」
 紗恵はたずねる。
「もしあなたが彼の立場だったら、学歴も大した職歴もない女を好きになりますか。そんな女と真剣なお付き合いをしてもいいですか」
「えー? 僕があんたの彼氏みたいな男やったらぁ? 僕、そんなえらい人になったことあらへんさかい、わからへんわ。どんな異性と付き合いたいかって、そら人それぞれなんちゃう? それにしてもあんたは時々しょうもないこと言いよるなぁ」
 中山さんはいつも笑顔だけど、この時ばかりは表情を曇らせ、毅然とした口調で言った。
「学歴や職業がどうこうというよりも僕は、そんな卑屈なことを言う女はごめんや。紗恵ちゃん、あんた自分のことを大したことない人間やと思っていたら、ほんまにそうなってまうで。そして相手にも軽んじられるようになる。何歳であろうと何をしていようと、堂々としとればええねん。自分のラベルは自分で貼り。相手がたとえ誰であっても、必要以上に低姿勢になったらあかんで。相手に対しては『私と付き合えてあなたは幸せよ』くらいに思っとけばええんや」

 紗恵はなんだか虚をつかれた気がした。
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