一緒に暮らそう
 新多は店員を呼び止め、まだ手をつけていない牛丼セットを持ち帰り用のパックに詰め替えてもらった。
「悪いけど、食事は研究所でとる」
 彼はそう言い残し、さっさと勘定を済ませて店を出ていった。

 一人残された翔子は、目の前のトレーに載ったどんぶりを見下ろした。でも、何も食べる気がしない。
 バカみたいだった。これでは自分はすっかり悪者みたいではないか。これで彼にはすっかり嫌われてしまったはずだ。
 頬の上を涙が一筋つたって落ちる。
 大人になってから泣いたのはしばらくぶりのことだ。しかも人前で泣くのは、かなり久しぶりのことだ。

 切ないけど、それでもまだ彼のことが好きな自分がいた。

< 145 / 203 >

この作品をシェア

pagetop