一緒に暮らそう
 こんなに大勢の人でにぎわう街に来たのは久しぶりだ。数年前に東京に住んでいた時以来だ。故郷に戻って以来、あの大都会を再び訪れることはなかった。

 週末の三宮センター街は多くの家族連れやカップルでにぎわっている。紗恵と新多の二人はどこまでも続くアーケードを歩いた。この前、紗恵がテーブルウェアを買ったのもこの通りにある雑貨屋だ。彼女は新しい町を探検しつつある。

 紗恵は一軒のアクセサリー店で足を止めた。
 髪飾りやネックレス、ピアスなど、あらゆるアクセサリーが手ごろな値段で売られている。こんなに品ぞろえのいい店は田舎にはなかった。

 彼女は数々の装飾品に目を奪われて店内を歩いた。
 新多が店の一画で彼女を待っている。女の買い物に付き合うのは久しぶりのことだ。

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