一緒に暮らそう
自営で惣菜屋をしていた時よりも、人間関係では多少苦労する。
調理場は主婦のパートで構成された女の世界だ。個性の強い中高年のおばさんたちが仕切っている職場である。正社員とはいえ新入りの紗恵より先輩の彼女たちに、気を遣いながら仕事をしている。時にはそりの合わない同僚の陰口を紗恵に吹き込んできたりして、女ならではの厄介な側面もある。
鈍くさいことをしていると、「何してんねん! さっさとしーや!」とおばさんたちに叱咤される。慣れるまではしばらく気を張りそうだ。
最初、言葉の違うよそ者の紗恵にその素性をたずねてきた。おばさんだから結構あけすけだ。
出身地を言うと、「お米がおいしいええ所やないの。何で引っ越さなあかんかったの?」とたずねてくる。新多とのいきさつまでは話さないけれど、田舎には仕事がないので、職を求めて関西に来たと説明している。
実年齢を言うと決まって驚かれる。せいぜい25くらいにしか見えないらしい。童顔なのは昔からだ。
今年三十になるのに未だに独身だと知られると、「誰かええ人はおらへんの?」と訊かれる。
本当は最近「ええ人」ができつつあるけど、おばさんたちの噂のかっこうのネタになるのは嫌なので、正直には答えなかった。
調理場は主婦のパートで構成された女の世界だ。個性の強い中高年のおばさんたちが仕切っている職場である。正社員とはいえ新入りの紗恵より先輩の彼女たちに、気を遣いながら仕事をしている。時にはそりの合わない同僚の陰口を紗恵に吹き込んできたりして、女ならではの厄介な側面もある。
鈍くさいことをしていると、「何してんねん! さっさとしーや!」とおばさんたちに叱咤される。慣れるまではしばらく気を張りそうだ。
最初、言葉の違うよそ者の紗恵にその素性をたずねてきた。おばさんだから結構あけすけだ。
出身地を言うと、「お米がおいしいええ所やないの。何で引っ越さなあかんかったの?」とたずねてくる。新多とのいきさつまでは話さないけれど、田舎には仕事がないので、職を求めて関西に来たと説明している。
実年齢を言うと決まって驚かれる。せいぜい25くらいにしか見えないらしい。童顔なのは昔からだ。
今年三十になるのに未だに独身だと知られると、「誰かええ人はおらへんの?」と訊かれる。
本当は最近「ええ人」ができつつあるけど、おばさんたちの噂のかっこうのネタになるのは嫌なので、正直には答えなかった。