一緒に暮らそう
「関係あるわよ! 彼は私の元彼で級友なのよ。だから、いずれ素晴らしい人と知り合って幸せになってほしいと思ってた。彼に釣り合うほどのインテリじゃなくても別にいいの。でも、あなたは私が女として一番尊敬できない生き方をしてきた人だわ。女を売り物にして生きてきた。そして、年齢的にそれができなくなったから、エリートの男を捕まえて結婚しようと目論んでいるのよ! 図星でしょ!」

 紗恵は目の前に座っている年かさの女を観察した。
 よく手入れがされた肌や髪、上質な衣服、濃い目のメイク。それらは知的な職業に従事する彼女の自信の表れだ。
 こんな太陽のように輝いている女には、持たざる者の理屈なんてわからないだろう。

「彼を神戸の研究所に呼んだのは私なの。四年前、あなた方が住んでいた町の研究所に欠員が生じたのね。他の研究所の所員は誰も後任になりたがらなかったものだから、彼が手を挙げたのよ。当時は『島流しの刑にあった』って揶揄されたものだわ。でも、私は彼のそういうところが好きよ」
 おそらく翔子はまだ新多に思いを寄せているのだろう。
「彼は田舎でくすぶっているような人じゃないと思った。だから私、人事部に働きかけて彼を都会の研究所に呼んだのよ。栄転に値する実績も十分に積み重ねていたわ。彼はこれからますます研究者として活躍する人よ。変な虫が付いたら大変なのよ」
 相変わらず歯に衣を着せない物言いをする。
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