鬼滅羅〈キメラ〉
閑散とした住宅街。
25時の東京郊外。
私は、古ぼけたアパートの外階段を上った。
かんかんかん、と硬質な音が辺りに広がっていく。
3つあるうちの、真ん中のドアの前まで来ると、いつものように私は表札にちらと視線を遣った。
『倉橋 茜 啓吾』
これは、あいつがやったものだ。
表札なんて、奴らに見つかる糸口になってしまうから、私は止めようとしたのに、あいつはこれだけは譲らなかったのだ。
ばかなやつ。
私は、諦めたように舌打ちすると、ドアを開けた。
外の街灯の灯りを拾って、なんとか見える程度の明るさ……否、暗さである。電気はとうに止められていた。
キッチンと、たった6畳半の一間があるだけの、みすぼらしい住居。
そして、その部屋の中心に置かれた、小さな卓袱台の向かいには、見慣れた人影があった。
あいつの、姿だった。
「お帰りなさい。母さん」
25時の東京郊外。
私は、古ぼけたアパートの外階段を上った。
かんかんかん、と硬質な音が辺りに広がっていく。
3つあるうちの、真ん中のドアの前まで来ると、いつものように私は表札にちらと視線を遣った。
『倉橋 茜 啓吾』
これは、あいつがやったものだ。
表札なんて、奴らに見つかる糸口になってしまうから、私は止めようとしたのに、あいつはこれだけは譲らなかったのだ。
ばかなやつ。
私は、諦めたように舌打ちすると、ドアを開けた。
外の街灯の灯りを拾って、なんとか見える程度の明るさ……否、暗さである。電気はとうに止められていた。
キッチンと、たった6畳半の一間があるだけの、みすぼらしい住居。
そして、その部屋の中心に置かれた、小さな卓袱台の向かいには、見慣れた人影があった。
あいつの、姿だった。
「お帰りなさい。母さん」