君へ届け




田んぼの広がる道を歩きながら、ふと思い出した。


嫌がらせで、トイレに閉じこめられたあたしを助けてくれた蓮司は




あれから片時もあたしの傍を離れなくなった。



夏休みに入っても新学期が始まっても。



この道を、みんなにからかわれながら手を繋いで歩いたっけ。



  俺がずっと傍にいてやるから。

  守ってやるから…───



あたしを置いて帰ったことに

責任を感じてそう言ってくれたんだって、今なら分かる。



だけど当時のあたしは勘違いしてた。




ずっと一緒にいてくれて、これはプロポーズだとさえ思っていた。


あたしは蓮司と結婚するんだって思えて、嬉しかった。




今から考えれば恥ずかしい話だ。







< 15 / 71 >

この作品をシェア

pagetop