エゴイスト・マージ
やっと試験が終わり、学校は午前中だけ
昼休みがないから科学室には行けない
今日は先生に会えずに帰るしかなった

きっと先生は私が来なくってヤレヤレと
思ってるだろうな

……いやそこまで気にしてくれてるかどうか
怪しい感じもしなくはない

一応、私は日直だったので、職員室に
書類を持って行ったとき
もしかしたら、とも思ったけど
そこにはいなくて

多分あの教室で一人、本を
読んでるだろう姿が浮かんだ

この前はメロンパンだったから今日あたりは
アンドーナツあたりをかじりながら

先生は食べ物にこだわり皆無だから
その日購買で余ったパンをテキトーに選んで食べてる
だから同じ物を三つ食べてるなんてザラだった

もう殆ど学校に
生徒は残っていなかった
部活も今日まで中止で
さっきサッカーの人達が
集団で帰っていく中、裄埜君の
姿を見つけた

彼は試験どうだったんだろう

上位発表時いつも5位内くらいに
入ってるから
今回も余裕だろうな
大学はどこを狙ってるのかな


いやいや

他人の心配じゃなくって……


ヤバイ教科は無かったよね
一応進学予定だからこの時期
試験判定で志望校の合否が
ある程度決まってしまう

大丈夫、大丈夫と
自己暗示をかけながら
足を駅へと向かわせていた

アレコレ考えていた所為で
その存在に気がつかなかった

「雨音ってさ~
いつも何か考え込んでるよね」

すぐ傍で、
そう聞こえてビックリした

「わっ!」

「そうそう。そしてその驚いた顔」

再びクスクス笑う

「裄埜君!?」

確か
ずっと前に帰っていたはずなのに

「偶然だね。俺も今帰りなんだ」


「サッカー部の人達と
帰ってなかったっけ?」

「……あ。見られてたのか
本当は雨音待ってたんだここで」


私を?


改札口の横で立ってる話してる彼を
女の子達が見るとはなしに
チェックしている様子で
時々

”ちょ見た?マジ、カッコイイよぉ”

”イケてるよね~”

そんな言葉が聞こえてきた


何か私なんかが隣で申し訳ない気がして

「ははは。もう冗談キツイよ」

スルーして改札を逃げるように走った


「冗談?待って」

乗り込んだ車両に裄埜君が
追いかけて続いてきた

「何で逃げるの?」

掴まれそうになった腕を
素早く外す

「逃げてないよ」

ウソだけど

裄埜君周り見えてないの?
メチャクチャ見られてるんだけど
それともこういうの慣れてるのかな

その日乗り込んだ車両は
何故か女子高生が多く
大半は裄埜君を見ていた

「そう?ならいいけど」

裄埜君に対しキャーキャーと
騒いでてる一方
私には冷たい視線が注がれていた

流石に鈍い私でも分かる程
それはあからさまだった

きっと不釣合だと思われてるんだろう

自覚あるだけに
いたたまれない


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