エゴイスト・マージ


だけど、そんな私の心中などお構いなしに

裄埜君は私の腕を取って

「俺の方見て。この前の返事
聞きたいんだけど」


「この前って?」

「花火だよ。一緒に行きたい」

本気だったんだ、アレ


「ごめん。その日、用事あるから……あの」

途端

”うわっ、何様?あの子”

という声が漏れ聞こえた

私は裄埜君に対して申し訳ない気持ちと
周りに対しての恥ずかしさとで
ごちゃ混ぜになって俯いてしまう


「そっか、じゃ仕方ないな
雨音の浴衣姿、凄く可愛いだろって
かなり楽しみだったんだけど」

「私なんて……」

そう言いかけた時
裄埜君はいきなり私をドア側に背を向けさせ
私の頭の真上に手をついてその長身を屈めた

それから、かなりの至近距離で

「自覚ないの?
雨音、滅茶苦茶可愛いよ」



まるで見ていた女の子達に聞かせるかの様に
ハッキリと言い切った


――――言葉が出ない




思わず反射的に裄埜君を見上げてしまった


態勢にも驚いたけど

こんな事、素で口にする人いるんだ


おかげであれ程気になっていた
周りの子達の視線も
言葉もまるで聞こえなくなってしまった

私はきっと全身真っ赤になってるだろう
それくらい恥ずかしかった

もう心臓はバクバク


なのに



言った当の本人は涼しい顔で
私を見てニッコリ微笑んでいた





あの後、裄埜君が家まで送るよって
言葉を必死で断って家に帰った

家に帰っても思い出すだけで
恥ずかしくってなかなか夜眠れなかった

裄埜君にとってどうってないこと
なのかもしれないけど私は
こういうことあんまり慣れてないから
どう対処していいのか分からない

裄埜君が何を考えて行動しているのか
イマイチ掴めずにいた



――でも、ちゃんと断れて良かった



明日も先生を誘おう

無駄に終わるかもしれないけど
まだ日にちはあるし頑張ろうっと




翌日、お弁当を広げて
待ち構えてると先生の方から

花火に付き合ってもいいと
言ってくれた

どういう心境の変化だろうか

表情を見る限り乗り気でないご様子

それでもOKと了承を得たことには
変わりない

どうしょうメチャ嬉しいんだけど


家に帰ってお母さんに浴衣の着付けを
手伝ってもらってアレコレしている
うちに時間ギリギリになってしまった

折角お風呂に入ってきたのに
また汗をかいてしまった

やっと着いた所で、先生は
冷ややかな目で見下ろしてくるだけ

案の定、浴衣の件には一切触れてこなかった

期待してなかったけど
ちょっと悲しい



学校で待ち合わせをして
それから会場へ……と
思っていたのに

先生は学校の中へと入っていこうとした

「そっち学校。会場あっちだよ?」

「行くわけ無いだろう、人混みは嫌いだ」


ここまで来て、何ソレ

「付いて来い」

くるりと背を向けて先生はスタスタ
屋上の方へ歩き出した
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