世界が逆転した日
「それでそちらの女性は...?」


そう言われて、まだ名前も名乗っていないことに初めて気づいた。
どれだけ失礼なやつなんだ、俺は。


「は、初めまして。お...あ、私は伊藤あつ...こ、です。」


「彼女は俺の大切な人で今一緒に暮らしています。」


明宏!!本当にそんなこと言うなんて!
それ以外言いようがないんだけどさ。


「一緒に...?結婚するつもりなのか?」


「まあ...いずれはできたらいいなと思っています。」


そう言って言葉を濁す明宏。
そうだよな。俺たちは結婚なんてできるわけがない。
俺は男としては行方不明で、女としては戸籍がない状態なんだからな。

ああ、終わったな。
こんな得体の知れない俺と一緒に暮らすことを許してくれるわけがない。
俺は家を追い出されるんだ。
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