世界が逆転した日
今食べている料理はフォアグラとかいう名前でカモの肝臓らしい。
店の人がそう言っていた。
この世のものとは思えないくらいのおいしさだ。
その他にも豚のソテーやら牛のステーキやらが次々と運ばれてくる。

値段が気になるところではあるけど、なぜか俺が渡されたメニュー表には値段が書かれていなくて知ることができない。


「元気そうだな?」


「はい、おかげさまで。誠司さんもお元気そうで。」


せ、誠司さん!?
やっと会話したと思ったら、自分のお父さんをそんな風に呼ぶの?
なんでそんな他人行儀なんだ!


「あ...。」


驚きのあまり、またフォークを落としてしまった。
これで五回目だ。
そのたびにすぐに拾いにきてくれる店の人に本当に申し訳ない。
何も言われないけど、店の人にも明宏のお父さんにも呆れられているに違いない。
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