愛するということ
私は、なんだか『中川君』の急変に、驚くのと同時に、ついさっき去っていったはずの、恐怖がよみがえってきた


「ちょっと・・・待って」



『中川君』が一歩こちらに寄ると、私も一歩後ろへ下がる。


最初の数歩は、距離を縮めることはなかった。

でも、それは、私の体が壁まで下がったところで、終わった。



徐々に詰め寄られ、『中川君』はあっという間に私の目の前まで来ていた。



「中川君?ちょっと・・・近い・・・」

私は、もう『中川君』の顔を見ることが怖くてできなかった。




私の恐怖心には気付いていないのか、『中川君』は、突然、肩を掴んできた。

「だめかな?

どんな奴か、分からないっていうんなら、とりあえず付き合ってから、考えてもいいよ」



掴まれた肩に、グッと力が入り、痛みが襲ってくる。

私は、痛みと恐怖で声を出すことができない。
ただ、必死で頭をブンブンと横にふることしかできない。
< 26 / 217 >

この作品をシェア

pagetop