愛するということ
「今年は、出さないよ。バスケとか忙しくって全然描けてないから」


できるだけ何でもないように言ってみた。
本当は、焦って焦ってしょうがないってこと、ママが知ったら心配させてしまうから。


なのに、


「瞬、言い訳をしちゃダメよ。人は、駄目だって思っちゃうとそこから前に進めないの。忙しいのは、みんな同じでしょ。そんなことで、美大に行きたいなんて言ってるの」


ママの言っていることは、間違っていない。
でも、ママがいない分家事の負担だって、やっぱり馬鹿にならない。




全部家事のせいってわけじゃないけど、『よくやってくれてるね』って言葉をかけてくれてもバチは当たらないと思う。

それに、自分でも描けないって焦りだって感じてる。
それを言わないのは、ママに心配させたくないからなのに・・・



徐々に自分の中に溜まっていたモヤモヤが、溢れ出した。



「ママは、分かってない!家のコトはほとんど私に押しつけて、仕事仕事って、そんなに大事なんだったら、家族なんて作らなければよかったじゃない」


言いながら、ママが仕事を頑張っているのは、私たちの為だってことぐらい分かってる。



けど、言いだした口が止まらない。
< 64 / 217 >

この作品をシェア

pagetop