愛するということ
「損な役回りだなあ・・・」


誰にも聞こえないように漏らすと、
突然、ドアが開いて


「ただいまぁ。おう!瞬、おつかれ。

今日も一撃で撃退ですな。
お前、ますますスナイパー化してるなぁ。
逆恨みされないように、気をつけろよ」



ポンと肩をたたきながら入ってきたのは、一番上の兄の拓馬(タクマ)だ。


「アニキ、見てたんだったら、アニキが言ってもよかったんじゃん」

顔だけ部屋から出して、拓馬に言っているのは、2番目の兄の隼人(ハヤト)


「馬鹿だなあ、俺が出て行ったらますます、ヒートアップしちゃうかもしれないだろ?」


「だからって、瞬だって女なんだぞ。また、殴られでもしたらどうするんだよ」

そう。友里が告白されるようになって、初めの頃は、私もひどい言葉を投げつけたりして追い払おうとしたんだけど、逆効果で、殴られたことがあった。


そのときは、ちょうど隼人が通りかかって、助けてくれたんだけど・・・

それから、なるべく事務的に、感情を出さないようにしているのだ。


「だから、何かあってもいいように、影から見てたんだよ」


半分笑いながら言っている拓馬は、8割方野次馬だったんだと思う。
拓馬は、友里の頭を撫でながら「友里には、強いお兄さんが3人もいて心強いだろ」なんて言ってるし。


「拓馬、それ、笑えない。瞬に謝れ!」


隼人が、突然大きな声を出したから、その場の空気が止まった。
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