愛するということ
「瞬ちゃーん。よかったぁ」


タイミング良く友里が部屋へ入ってきた。
ドアが開いたかと思うと、驚くほどの速さで瞬の元へと駆け寄り、傍にいた俺は、弾き飛ばされた。


「瞬ちゃん、よかった。よかった」



何度も何度も繰り返しながら、瞬の手をとりブンブン振っている。


「友里、瞬困ってる」

「あっ。ごめん。つい」

「ううん、大丈夫。心配かけてごめん」

「そんなことない!瞬ちゃんが悪いんじゃないから、謝らないで」



友里に、さっきと同じことを言われた瞬は、バツが悪そうに、俺の顔を見た。



「瞬ちゃん、拓馬ももうすぐ着くよ。さっき電話したら、すぐ近くまで来てるって。やっと、4人揃うね。そう言えば、駅前のパンやがね――」




友里は本当に楽しそうに話している。


考えてみれば、まだ中学生だ。


この2週間の友里の寂しさに全く気付いてやれなかった。
友里の傍にいたのは俺しかいなかったのに、瞬のことで頭がいっぱいだった。
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