愛するということ
「隼人・・・ママは?」


事故のことは、さっき簡単に説明した。

事故のことは、記憶にないらしく、意識が戻ってから、説明を聞くまでは、自分がなぜ病院にいるのか、分からなかったらしい。



「ああ、瞬と同じ。怪我して入院してる。」


当然、時間が経って頭の整理ができてきたら来るだろうその質問に、俺と拓馬が相談して出した答えがコレだった。



意識が戻った瞬に、事実を告げるのはあまりに酷だ。

退院の目処がたった頃、ゆっくり話そうと――



瞬は、一瞬目を開いて驚いていたが、自分がこの状態で、母さんが無傷ではないと思ったのか、『そっか、そうだよね』と笑って黙り込んだ



口の端を精一杯上げて、笑って見せようとしているのに、目は不安で今にも涙が溢れてきそうだ




「瞬、怪我はしているけど、大丈夫。今は会えないけど、すぐ会えるようになるよ」



俺は、精一杯明るい声で話した。

上手くウソがつけているか不安になる。
そんな俺を、ジッと見つめる瞬の視線を、逸らしたい気持ちを懸命に堪えた
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