君と見上げた空【完】
「…生まれつきの病気で
 いつまで生きられるか分からないの」


「……え?」


お母さんはその言葉をきいた瞬間
固まった。

私も自分で改めてその言葉を口に
してみるとすごく辛くなった。


「ほんとなの?蝶……」


「…ッ」


私はうんって言おうとしたけど
言えなくて、こくんと頷いた。

……


しばらく沈黙の時間が流れる。

お母さんは静かに静かに…
涙を流していた。


「ねぇ、お母さん…」


「…なに…?」


「私、どうしよう…
 空のこと、好きに…なっちゃった」

私がそう言うと、お母さんは
一瞬目を見開いた。

そして言った。


「何でどうしようなの?」


「…え?」


「だから、なんで空くんのこと好きに
 なったことをどうしようって言うの?」



「それは……」


「そう言うってことは、空君は
 もうすぐ死ぬって思ってるからでしょ?」


「…ッ」

お母さんの言葉に、私は何も答えられなかった。


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