12年目の恋物語

それから二日後、ハルの意識が戻ったと連絡をもらって、オレは放課後、病院に飛んで行った。



牧村総合病院は、オレとハルの家から自転車で5分程度の距離。

学校帰りに、家を通り越して、制服のままで病院に向かった。



「ハル!!」



ハルが使うのはいつも特別室だから、いつもの部屋の表札を確認して、オレは飛び込んだ。



意識が戻って良かった!

大事に至らなくて、本当に良かった!!

ハル!!

ハル、本当に良かったな!!



そんな浮かれた気分で、オレはハルの病室に飛び込んだ。



けど、ハルはオレを見ると、



「……イ、ヤ!!」



怯えるように顔をゆがめた。



……え?




オレは最初、その言葉の意味が分からなかった。

まさか、ハルに怯えられるとは思ってもいなかったから、


だから、オレは、

ハルに何かあったのかと思って、慌ててハルの側に駆け寄って。



「ハル!?」



慌ててハルの腕を取ろうとしたら、



「ヤダッ! ヤッ!」



ハルが泣きながら、オレを避けようと、身体をひねった。



「イヤだッ!! 来ないで!!」



……来ないで?



まだ、酸素マスクも取れていなくて、

心電図もついたままで、

もちろん、点滴もしているハル。


ただ、意識が戻って病室がICUから一般病棟になっただけで、

ハルはまだまだ病人で……



オレを避けようと、全身で激しく動いて、叫んだハルの心臓は、怪しい動きをして、心電図計からの警告音が鳴り響いた。



「ハ、ハル!! 暴れないで!」



息も荒く、肩が激しく上下して、



「ヤ……ダ、イ、ヤ!」



泣き叫ぶ、ハルの呼吸はひどく苦しそうで、



「どうかしましたか!?」



看護師さんが、部屋に駆け込んできて、

それから、オレは、部屋を出された。
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