12年目の恋物語
「……しーちゃん」

「大丈夫? て、まあ、叶太くんが何も言わないからには、大丈夫なんだろうけど」



……なに、それ。



思わず、笑ってしまった。

口の端をゆがめて。



こんな笑い方、おかしい。



胃の辺りがズーンと重い。



「陽菜?」

「あ、ううん。なんでもないの」

「ホント? なんか、最近、元気なくない? ……って、昨日、一昨日、休みだったもんね。元気なはずもないか」

「ううん。そんなことないよ。治ってなかったら、出してもらえないから」

「あはは。叶太くんだけじゃなくて、陽菜んちの家族も過保護だもんね」



過保護。

そう、過保護。



でも、カナがわたしの保護者をしなきゃいけないってのは、おかしい。



やっぱり、おかしい。



「……ちょ、っと、陽菜。やっぱり、あんた保健室行っておいで」



と、しーちゃんが、わたしの肩に手を置いた。

気がついたら、涙がぽろぽろこぼれ落ちていた。

机の上にぽとり、ぽとりと落ちた涙で、小さな水たまりができていた。



「叶太くん!」



そうして、しーちゃんが、2つ前の席にいるカナを呼んだ。



やめて。

カナを呼ばないで。



だけど、現実問題、カナは保健委員で、

大丈夫だというわたしの言葉を無視して、カナはわたしを軽々と抱き上げて、

大丈夫だと言うのに、保健室に連れて行かれた。
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