12年目の恋物語

「じゃあ、悩みごと?」



羽鳥先輩は、わたしが作った偽りの笑顔の壁をサクッと飛び越えて、わたしの心の中に飛び込んできた。



「え……っと」



これまでに、もう数十冊は本の貸し借りをした。



本の内容について、ああだこうだ言いながら、自分の話をしたり、先輩の話を聞いたり。

悩みごとを打ち明けるような場面はなかったけど、自分だったらこうしたとか、先輩だったらどうするとか、そんな話もしていた。



だから、先輩がそう聞いてきたのも、とても自然に受け止められた。



「女の子の友だちができないんです」



そう言ってから、慌てて言い直した。



「あの、いえ。普通にしゃべる子はいるんですけど、あの……親友が」

「そっか」



先輩は、いつものように、そのままだとキツく見える切れ長の目を細めて、優しく笑った。



「女の子は、やっぱり親友とかって欲しいんだね」

「え? 男の子は違うんですか?」



そんなことを話していたら、カウンターに生徒がやってきた。

わたしたちは、慌てて会話をストップした。

< 45 / 203 >

この作品をシェア

pagetop