12年目の恋物語

2人の仲が、すっかりおかしくなって1ヶ月ほど経った6月頭。



相変わらず、広瀬は足掻きまくり、オレはひたすら『話だけなら聞く』という姿勢。



昼休みの弁当は、すっかり、広瀬と二人、プラス、普段は学食組の数名と食べるようになった。



牧村は、寺本志穂のグループに行ってしまって久しい。



さすがに、そろそろおかしいと思うヤツもいるようだ。

が、送り迎えも変わらず続いているし、ハルちゃんだって女友だちも欲しいよね、くらいに思われているらしい。



さすがは、長年の公認カップル。



広瀬が、今日はハルにこんな冷たくされた、

あんなこと言われた、とイチイチ報告して、

オレが「はいはい」と聞き流すのも、既に日課と化していた。



まるで、どっかで読んだようなシチュエーション。

思い出して、思わず吹き出した。



そう!

昔、何かのマンガで読んだ熱烈な片思い。



ホント、どの辺が、学校公認カップル?



授業中に思い出して吹き出したもんだから、隣の牧村が、



「どうしたの?」



と、不思議そうに聞いてきた。



その時の授業は、かなりヨボヨボのおじいさん先生が担当する数学。

ひたすら、教科書を読み、練習問題になると、決まった法則で誰かを当てる。

だから、オレは気がゆるんでいたのだと思う。

くすくす笑いを引っ込めると、つい牧村に聞いてしまったのだ。



「なんで、広瀬に冷たくするの?」
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