教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
あたしは先生の何だったんだろう。


思い焦がれて気持ちが通じて、ケンカして他の女の子とキスをされて。


ただの欲求を満たす女の子だったのだろうか。


誰もいなくなった教室でぼんやりとそんなことを考えていた。
ガラガラッ。


教室のドアが開かれる音がする。


森田先生だった。


いつもなら嬉しいはずなのに。


「青葉?まだいたのか」


「…はい」


「どうした?元気ないぞ」


「…」


あたしは返事をしないでただ彼の手を見ていた。


ずっとずっとこの手を離さないで、繋いだままでいられると思っていた。


だけどいつのまにか離れていたんだね。


あたしの知らない間に先生が離していたんだね。


「具合でも悪いのか?」


先生の手が額に伸ばびてくる。


次の瞬間、あたしはその手を払っていた。


「青葉!?」


あたしの目からはいつのまにか涙がこぼれている。


「どうしたんだよ?」


「キス、したんですよね?」


「えっ?」


「取り巻き…いや、月山さんとキスしたんですよね?」


「いや、あれは」


否定してくれないんだ。


あたしは先生が言い終わる前にカバンを持って走った。


「おい、ちょっと待てよ」


先生が追いかけてきてあたしの肩を掴もうとした。


「触らないでっ!」


パシン!


「…!」


あたしは無意識に先生の手を払うどころかはたいていた。
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