教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
第九楽章 思い悩む週末
ドキドキしながらディスプレイを見ると、そこに発信者の名前が映し出されている。


<青葉朝乃(あさの)>


「…母さんだ」


昨日、保健室にいて石野先生がやって来た時と同じような感情がわいた。


とりあえず発信ボタンを押して電話に出る。


「もしもし?」


「もしもし、水香?」


「うん。どうしたの?」


「お母さん、明日帰る予定だったけど今日の夕方に帰ることになったから」


「わかった」


「お父さんは明後日だからね」


「はーい」


「じゃ、あとでね」


「うん」


電話を切ってため息をついた。


再び部屋が沈黙の世界に戻る。


静かになってつきまとうのは孤独感と感傷。


静かで、しかも1人だと余計にいろいろ考え込んでしまう。


考えなくてもいいことまで頭に浮かぶ。


先生は今、何を考えているのだろう。


きっとあたしを恨み、嫌っている。


少なくともあたしのことを怒っている。


謝らなきゃいけないってわかっているけど、気まずい。


それが自業自得であることもわかっている。


だけどあたしは臆病で都合のいい女の子。


自分のせいなのに一歩前に踏み出せない。


どうすればいいんだろう。


誰か教えてほしい。
< 62 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop