教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
その夜、夢を見た。


先生があたしに問いかけている夢を。


先生は澄んだ瞳であたしに聞く。


「お前は俺を疑っているのか?」


あたしは何も言えない。


「否定しないんだな」


氷のように冷たく透き通ったまなざしを向ける先生。


その夢の中であたしはただ謝ることしか出来ない。


先生は一言呟いて去っていく。


「お前のこと、信じていたのに」


そう言っている間にも、彼の背中は更に遠くなる。


先生、待ってよ。


あたしを置いていかないで!


しかし、いくら走っても追いつかない。


あたしは走り、先生は歩いているのに距離はまったく縮まらない。


先生の身長が5センチくらいに見えるほど距離が空いたくらいになって、やっと彼は足を止めた。


するとちょうどのタイミングで向こうから誰かやって来る。


よく目をこらすとその人の顔が見えた。


それは先生の奥さん。


先生は見せつけるように彼女に激しいキスをする。


嫌だ。


やめて。


しかし、まるで金縛りにでもあったかのように声が出ない。


あたしは見ていられなくて無理矢理叫んだ。


「やめてー!」


その時だった。


ガタガタガタッ。


まわりが大きく揺れて、あたしはあちこちにぶつかって気を失ってしまった。
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