隣に住んでいるのは先生で……。



―――ガタッ



私は驚いて思わず、開ききっていなかったドアに背中をぶつけてしまった。



「あっ………」



その瞬間、私は先生と目が合った。



「あ………綾子」



「えっ………」



その先生の声に、女の人がこっちを振り向いた。



でも、私は二人を見る余裕なんてなくて………



「………ごめんなさい」



その一言だけ言った私は、直ぐにその場を立ち去った。



見たくなかった………。



先生と彼女がキスしているところなんて………。



見たくなかったよぉ………。



次第に視界がぼやけてきて、前もまともに見えなくなってきた。



涙で視界を遮られていく。



涙が溢れ出して、拭っても拭っても止まらなかった。



< 235 / 281 >

この作品をシェア

pagetop