親友ときどき上司~熱風注意報~
当時から男運のなかった瑞希を、いち早く見抜いたのも荘司だった。
冷静沈着な立ち居振る舞いで、一見すると仕事人間のように見える荘司が、上司からも部下からも信頼を得ているのは、彼の他人への観察力の鋭さだろう。
さり気ない気配りや、フォローを惜しまない。
他人のプライベートに踏み込む事はないが、絶妙な距離感で誰にも気付かれないような気を配る。
気を配られた当人にすら、気付かれない場合すらあった。
仕事が出来ると言う外面だけでは、得られない信頼を受けるのは、他人にとって心地の良い距離感を作れるからだ。
そんな社内イチのミステリアス男と長い時間を過ごすうちに、気付いてしまった。
冷静沈着すぎる瞳の中に、何かを隠している事に。
それは仕事終わりに一緒に入った居酒屋。
その頃には、荘司への萎縮はなくなっていて、仕事以外の事での説教は居酒屋と決まっていた。
つまり、当時のロクデナシ男の事を説教されていた訳だが―――