親友ときどき上司~熱風注意報~


 でもでも、だって、を繰り返す瑞希に、眉間の皺を寄せた荘司が、

「…いい加減にしなさいよ!」

と、ブチ切れたのだった―――

 高校までオランダで生活していた荘司に、日本語を教えたのは家族の中で唯一、生粋の日本人の祖母だった。

 きっとお茶目なおばぁちゃんだ。
 女性である祖母と、同じ様な日本語を話している孫の言葉遣いを訂正しなかったのだから。

 その証拠に、荘司の行動や仕草、服装の好みに女性的なこだわりは一切ない。

 もう一つの母国である日本の大学に入って初めて、自分が可笑しな日本語を話す事を知った荘司は、潤滑に会話をする為に冷静沈着に成らざるを得なかったらしい。

 淡々と話していたのは、言葉を選び再構築して発言しなければならなかったからだ。


 そして、もう一つ。
 これは、荘司に確認した訳ではなかったが―――

 荘司は、ゲイだ。

と、瑞希は思っている。


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