とある勇者の家系事情
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それはある日の夜のことです。
3ヶ月前に失踪した従姉の藤黄松葉(トウオウ マツバ)ちゃんが、肉じゃがの入った器を手にわたしの家の玄関にたっていました。



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松葉ちゃんが突然帰還してから、1ヶ月程たちました。
わたしは半月前から学校に通いはじめた松葉ちゃんに会うため、2年生が勉学に勤しんでいる階へと足を踏み入れます。
どうして上級生の所へ行くのって無駄に緊張するのでしょうか。
なんだか空気が重く感じます。皆がわたしを見ているようにも感じます。気のせいですよね、すみません。
無駄に心労を感じつつも、無事に松葉ちゃんの教室へたどり着くことができました。
や、別に危険性はないんですよ。わたしが小心者ってだけです。
教室をのぞくとすぐに松葉ちゃんを見つけることができました。
窓際の一番後ろの席で、一人静かに外を眺めてます。その周りには不自然なくらい人がいません。
そんな状況をどこか別世界のように感じてしまい、声をかけるのを躊躇ってしまいます。
松葉ちゃんの周りだけ、ぽっかりと穴が空いてる感じです。腫れものには触れない方がいいってことでしょうか。
そんな状況に正直苛立ちを覚えますが、仕方がないのかもしれないという考えもあり、自分の矛盾した気持ちで胸のあたりがもやもやします。
松葉ちゃんが失踪したのは高校2年に上がる前の春休みのことでした。
お隣さんであるわたしの家に、おすそわけの肉じゃがを持って出かけたまま行方が判らなくなってしまったのです。
いままでの松葉ちゃんの素行や、当時の状況などから事件性が疑われたのですが不審者の目撃や松葉ちゃん事態を見かけたという情報もなく、警察の方に遠まわしに家でに関与はしていないかと疑われたのも、松葉ちゃんが帰ってきた今となっては良い思い出です。
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