tearless【連載中】
『…るせーな』

“最近のお前、おかしいぞ”

“しかも、今度は高校生捕まえて何してんだよ…”

“忘れろとは言わねーけど、もうこんな事止めろって”

『つーか、お前ら説教しに来たわけ?』

“祐樹…。親父さんの事、そろそろ許してや…”

『アイツの話はすんなって、いつも言ってるよな?』

“祐樹っ!!”



―ドスッ……


寝ていた私の耳に入り込んできた会話と、誰かが倒れる様な音。



リビングで一体何が起きたのだろうか?



ベッドの端で小さく丸まっていた私は布団を頭まですっぽり被ると、耳を両手で塞ぎひたすら目を瞑って過ごした。

さっきの会話がグルグル駆け巡り、色んな考えが頭を過る中“あおい…”突然捲られた布団に、ビクッと肩が上がる。

反射的に体を起こすと、そこには祐樹と友達らしき2人がいた。



『…大丈夫?』




黒髪短髪の男が私の頬にそっと指を這わせると、ズキッと痛みで歪む顔。

“あ、ごめんな?”離れていく指先は、すごく温かくて、久しぶりに人の温もりに触れた気がした。



『はぁ、けっこういい女だったのにな…』



“抱かれたくなったらまた来いよ”スッと体を寄せ耳元で呟いた祐樹。

ゆっくりと視線を向ければ、相変わらずの冷たい視線に、唇を強く噛む。



『祐樹…』



ため息混じりに呟いた黒髪の男は、“もういいだろ?”さらに深いため息を吐くと、私を見下ろす。

その男の口元には、うっすらと血が滲んでいた。



「…帰りたい」



やっとの思いで口を開いた私に“あ?”祐樹が漆黒の瞳で睨み付ける。



『嫌いになった?俺の事…』



私の前にしゃがみ込み、髪を持ち上げる祐樹は愉しそうに笑ってて。

悔しさから視線を横にずらせば、髪から手が離れた。



『連れてくぞ?』

『ご苦労様、飼い犬君…』



煙草を加える祐樹の肩に手を添え退かしたその男は、“下に車あるから”フワッと私を抱き抱えると、いとも簡単に連れ出してくれた。



すれ違い様に見えた祐樹は妖艶に笑い、悪びれた様子はこれっぽっちもなく。

漆黒の瞳に見つめられながら、私は意識を手放した。



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