プリズム
夕飯と風呂を済ませ、部屋で花火が始まるのを三人で待った。

ホテルの部屋の窓からは湖が一望出来、浴衣に着替えた絵理香たちは、部屋から花火見物をすることにした。

窓際に置かれた木製の椅子に絵理香が座り、テーブルを挟んだ向かいに礼央が座った。翔は絵理香の傍に立つ。
夕飯の時から礼央は全く落ち着かなかった。

パーン、という音がして洞爺湖の花火大会が始まった。

絵理香も翔も花火が大好きだ。

翔が腕組みをして言う。
「しかし、前に行った隅田川の花火大会は混んでて参ったなー。」

「そうそう、翔、ハイヒールの履いた子に足踏まれたんだよね。」
絵理香は翔の方を向いて、可笑しげに言った。

絵理香と翔が花火大会の思い出話をしている横で、礼央は
「 今のは赤と青と白だった!」
「今のはひまわりみたいだった!」
花火が上がるごとに言い、はしゃいだ。

「礼央は打ち上げ花火、見たことがないんだよ。」

翔が絵理香に耳打ちした。
絵理香ももしかして、と思っていたところだった。

そろそろ花火も終わり、という頃。
絵理香が
「ああっ!」
と大声をあげた。

「絵理香!大丈夫?」

翔は慌てて絵理香に寄り添った。

絵理香は頬を薔薇色に輝かせて叫んだ。

「赤ちゃんが動いたの!」

初めてハッキリ胎動を感じたのだ。

きっとお腹の子も花火が好きで、音に反応したのだろう。

「ほんと?すごい。」

少しおろおろしながら、翔が絵理香のお腹に右手を当てると、礼央がその手をよけて、絵理香のお腹に耳を付けてきた。

絵理香も翔も思いがけない礼央の行動に驚いた。
礼央は、赤ちゃんに全く興味がないと思っていた。

「この子は男の子だよ。なんかチンチン付いてる感じするもん。」

礼央は嬉しそうにいった。
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