出会う前のキミに逢いたくて

私にできること

秋の大会に向けて練習が始まった。

いつも以上に厳しいメニューが待っている。

それでも選手たちは平常心を保ち、外野の芝生の上で柔軟体操を繰り返してる。

その中にはもちろん、マサキと前田くんの姿もあった。

二人は向かい合い、楽しそうに談笑しながらストレッチしていた。

普段、厳しい境遇にたたされてばかりのグランドで、あんなにもやわらかで、自然な笑顔で話している2人を見るのは初めてであり、不思議だった。

試合中の2人はいつも能面のように無表情なんだもの。

ラッキーな場面でも、アンラッキーな場面でもそれは変わりなかった。

打者の打ち取り方をマウンドで打ち合わせてるときなんて、まるで2人の鬼が向き合ってるみたいだったりする。

理由は、心の動揺を敵チームに悟らせないため・・・らしい。

やがてコーチの指示で全員が立ち上がり、縦列してランニングを開始した。

わたしは今日初めてマサキたちの練習風景を見るチャンスを得た。

これまではずっと「練習には絶対に来ないでほしい」ときつく言われていたから。
< 95 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop