出会う前のキミに逢いたくて
試合とは違って練習場にギャラリーの姿は見当たらない。

だから、もしもグランドの隅とはいえ、女の子がいようものなら間違いなく目立つ。

「たぶんあれ、誰かの女だぜ」

「誰だ、こんなところに女呼んだのは」

「女たらしめ。グランドに女を連れ込むなんてろくでもない奴だぜ」

たぶん、こんな感じでヒンシュクを買うのだと思う。

そういうのがイヤだから「来るな」とマサキは釘を刺してたんだと思う。

でも、この大会を最後に、彼は一時的にユニフォームを脱ぐことになってる。

考えたくないけど、下手したら最後のユニフォーム姿になるかもしれないのだ。

だったら1秒でも長く、今の姿を私に焼き付けておいてほしい。

その思いで私が練習を見に来ることを許可したんだと思う。

彼の勇姿を脳裏にインプットする。

何度も何度も何度も・・・。

これならわたしにだってできる。

いつもより2時間早く起きて、普段乗らない色の電車で駆け付けた。

ランニングのあとは2人1組でキャッチボール。

そしてバッテリーと野手に分かれての別の練習メニューに入った。
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