蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・上司、ね・・・」
慧は目を伏せ、大きなため息をついた。
先ほどの雅人の姿が脳裏をよぎる。
・・・絢乃の前に次々と現れる、男・・・
新しい男が現れるたびに・・・
慧の心に、黒く澱んだものが広がる。
それは絢乃が中学に入った頃から、より昏く、より澱んだものになった。
その理由は、とっくの昔に慧自身も自覚している。
大学の時の、あの男・・・・。
6年経った今でも、思い出すだけで黒い炎が慧の胸を焼き尽くす。
・・・けれど雅人は、あの男とは全く違う。
絢乃がいつ心惹かれてもおかしくはない、一流の男・・・。